最近、李君は会社の仕事が忙しくて、なかなか北朝鮮レストランへ行く暇がなかった。実は、北朝鮮レストランは李君の会社から歩いて5分もかからない距離にあったが、李君の所属しているチームのシステム開発が最終段階(結合テスト)に突入し、残業の日が続いた。
たまに李君の姉さんから電話がかかってきて、ガールフレンドができたかを聞いたりする。李君の場合には、ハンサムで誠実で、大学の時に李君のことが好きな女の子は多かった。大学を卒業してからは、一流のソフトウェア会社に就職し、条件的には良かった。
しかし、中国で男性が結婚するのは簡単なことではない。まず、中国では、男子青年の数が女性青年の数より、4500万人も多い。具体的に言えば、1980年代に生れた女性は男性より680万人少なくて、1990年代に生れた女性は男性より1308万人少なく、2000年代に生れた女性は男性より1355万人少なく、2010年代に生れた女性は男性より1200万人少ないという。かなり厳しい状況である。
また、結婚の際には、女性または女性の実家から、男性側にアパートや車、貯金などを所有することを条件として提示する場合も多く、かなりハードルが高かった。中国の上海などの地域ではアパートの1平方メートルの単価が5万人民元(73万円あまり)もし、大学を卒業して就職したばかりの若者が10年~20年頑張っても部屋一件を購入するのはとても厳しい
それでも、結婚の直前にアパートや車などを購入し、その結婚条件をクリアする若者も多い。なぜ、それができるかというと、両親やおじいさん、おばあさんたちがお金を集めて買ってくれるからだ。
李君の場合には、両親からの資金面でのサポートは難しく、李君も両親に頼るより、自分で頑張りたいと思っていた。最近は、中国国内での結婚が難しくて、ベトナムやタイなどの海外の女性と結婚する若者が増えてきたし、ロシア女性と結婚するケースもある。李君の場合には、朝鮮族で、言葉の面では支障がないので、北朝鮮の女性と結婚するという選択肢があるかも知れない。テレビでは北朝鮮のニュースが流れた。天気が熱くて、北朝鮮
では生ビールの祭りをやっているらしい。李君は酒には強くないが、朝日スーパードライと麒麟ビールが好きだった。李君は佐藤と一緒に北朝鮮にいったときのことを思い出し、忙しい仕事が一段落終わったら、もう一度、北朝鮮のレストランに行ってみたいと思っていた。